現代行き列車 未来停留所4
ふと、フィルムカメラを持って街に繰り出したくなった。
「まぁ別にハマってることとかないんすけどぉ、写真はやってます、はい。」
とか、顎を上げて漏れ出す“やってます感″を出せるほど高尚なものではないが、ただただあのシャッター音が聞きたいがために、この茹だるような暑さの中歩を進めることは私にだってあるのだ。
人間、10数年その土地にいれば否が応でも順応するものだ。
したからこそここにいるんだと思う。
だがしかし、慣れとは怖いもんで、別段撮りたい衝動に駆られないのである。
正味フォトグラファーの方々からすれば、瞬間瞬間に存在するに決まってるだろ。と冷笑されるだろうが、新宿に対して鮮度がなくなってしまった。のかもしれない。
思えば18で上京してきたアノ頃、山手線の車窓から目の当たりにした新宿の異世界感は、とっくに自分の中で現実として消化されたのだ。
私が東京、こと新宿やら渋谷やらの風土に馴染むとも思えなかったが、なんだかんだやっているのは不思議な感覚だ。
酷暑の日差しが降り注ぐ中、歌舞伎町のゴジラをファインダーに捉え急激なノスタルジーを振り払うかのように32歳の私はシャッターを切った。
寛人