現代行き列車 未来停留所6
何故もっと普通の人がいないんだろう。
何故自分みたいな考え方の人がいないんだろう。
何故。
自分に都合のいい世界があったらそりゃあ楽だろう。
自分にとっての普通なんて、他人にとっては異常なのだ。
いつしかエゴの塊となってしまった心を、私は私に対して拒否感を覚える。
池袋駅西口。芸術劇場へ向かう道すがら、雨が降ってきたようだ。
しかしポツリポツリと頬を叩いては瞬時に渇くそれに対して、傘をさす者はいない。
そんな中一人だけマイノリティが存在した。
私の背中の後ろでカップルと思しき女が、
「え傘さしてる。雨?」
男が言う、
「あぁいう気持ち悪い奴がいるから…」
その後に続く言葉は聞こえなかったのか遮断したのか定かではない。
何故そんなこと言っちゃうのかな。なんて真面目に考えてしまった。
恐らく男はその様を面白可笑しく表現したか、女の前でイキって強い自分、こんな事を他人に言っちゃえる自分を演出したか。
私ならそんなパートナーとは距離を置きたい。
でもその時は「そういう人もいるよな」なんて殊勝な、いや諦めにも似た気持ちになったのだ。
突然だが、人生は何週もするのだそうだ。
人生一週目の人は心が狭かったりするらしい。
でもまた人間に還ってこられるかは分からないんだって。
「積善の家には必ず余慶あり。積不善の家には必ず余殃あり。」
こんな言葉を思い出した。
別に良い奴ぶるわけではないけど、心持ちはそうありたいものだ。
でもさ、人間って皆がみんな完璧な存在じゃないじゃない。
みんな違うし、この人はこれができる、アノ人はこっちができるってな感じで役割が分かれている。性格も然りで。
みんなが助け合っていけるように私たちは凸凹なんだって。
そう思ったとき、東京の排気ガスと人混みと錯綜する情報とで真っ黒になった私のエゴを金だわしで擦り落としたくなったが、それも自分だと思えばなんだか気持ちが軽くなる。
改善の余地は否応なく存在するのだけどね。
なんにせよ圧倒的な自然に飲み込まれたら人間なんてほんの米粒みたいなものなのだから。
寛人